働くこととストレス発生の仕組み

学生時代を終了し、就職したばかりの新社会人の多くは、職場
や自分の力に対してポジティブな理想を描いています。
「やる気と元気さえあれば、どんな仕事でもできる」「成績も悪く
なかったし、自分ならすぐに活躍できる」など、就職活動中や
内定期間中の自己アピールの状態そのままに、ポジティブな
姿勢で新社会人として勇んで出陣します。

しかし、実際に職場に入ってみれば、つらい事も面倒な人間関係も
たくさんあります。ドラマにあるような理想のビジネスライフを想像
していれば、現実とのギャップはますます広がるばかりです。

学校とはお金を払って学ぶところでしたが、職場は働いてお金をもら
うところです。ですから、座っていれば仕事のやりかたを教えてくれる
わけではありません。上司や先輩は、人生や仕事においては経験豊富
ではあります。しかし教育者ではありませんから、仕事を進めるための
指導はしてもらえても、教育をしてもらえるわけではありません。
また、職場では学校のように同世代ばかりが集まっているわけではあり
ません。子供や親を養う人もいれば、ローンを抱えている人、病気持ち
の人、離婚した人・・・など世代もバラバラなら、遭遇しているライフ
イベントも様々です。
そんな新しい環境の中で感じた理想と現実のギャップにより、「こんな
はずじゃなかった」「自分に合った仕事や職場があるはずだ」と嘆きだし、
逃避的な考えが浮かび始めます。

それらのギャップや初めての人間関係に戸惑い、困ったときでも誰にも
相談できないことがあります。それまでに成績優秀であったりすると
プライドが邪魔をして、ますます誰にも相談できずに、ひとりでかかえこみ
孤立してしまう場合があります。

こうして、職場不適応症の兆候が表れたり退職を考えだします。
一方、企業としては、離職率が上がり途中まで育てた戦力を失うことになり、
減益にも直結する損失となります。

心と体の健康を損なってしまった場合は、専門の治療が必要となります。
しかし、投薬などで一時的に治癒したかのように見えても、頭で考えている
ことと、心で感じること、そして実際の行動が一致(=自己一致)していなけ
れば、またすぐにストレスは溜まっていきます。

例えば、「引きこもり」と呼ばれる人も、頭や心の中では「これではいけない」
と強く思っていることがあります。逆に行動としては黙々と従順に働き続けて
いても、職場や仕事の内容にまったく納得がいかないときもあります。

1.心で感じること(=制御不可能。パーソナリティに起因する)
2.頭で考えること(=制御可能、後天的な環境や教養により左右する。)
3.実際の行動(=感情や思考で動く。知らないことはできないので行わない。)

ストレスが溜まっている状態というのは、この3点が一致していない状態を
指すことが多いと言えます。これらのバランスは人によって様々です。
例えば、残業がとても多い仕事であっても、本人がとてもやりがいを覚え、
充実していると感じられれば健康を害すまでには至りません。
しかし、頭では「世の中に必要なことだ」と納得し、多くの残業をこなして
いても、心が疑問を感じて、いつのまにかストレス過剰になるときもあります。
また、残業があまり無い仕事であっても、報酬や人間関係などで納得がい
かないまま自分を騙しながら生活していると、心や体の健康を害してしまう
こともあります。
もう少しわかりやすい表現にすると、ひとりの人間の中で上記の3つが矛盾し
続けると、心や体を害するストレスが発生すると言ってもいいかもしれません。

ただし、どんな環境も、いつもすべて自分に都合の良いようにお膳立てされる
ことは決してありません。入社してすぐは、とても充実し居心地が良かった職場
も、昇進したのをきっかけに居心地が悪くなることもあります。昇進という個人に
とっては一見良さそうな変化であってもです。ですから、ストレス発生のきっかけ
になる可能性のあるライフイベントとして、身近な人の死亡や離婚だけでなく、
結婚や昇進、栄転なども含まれているのです。

これらの矛盾を解消するために、余暇の過ごし方を工夫したり、スポーツをしたり、
愚痴を誰かに聞いてもらったりと、いわゆる「ストレス解消」をします。この矛盾が
自分ではどうにもならないまま心身に症状を来してしまったり、周囲から勧めらた
ときには、専門医やカウンセラーに相談をすることも効果的といえます。
ただし、先述したように、自己一致は本人の認知や意識に依って変化します。
ですから、風邪の熱が注射で下がるように、病院やカウンセリングに行きさえ
すれば、すぐに解消してもらえるものではないことをご了承ください。


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