葛藤から防衛する、または逃避する

人は、欲求不満や葛藤を予感したとき、不安になり、自己を防衛しようとします。
これは無意識の反応で、フロイトによってさまざまな防衛のメカニズムが明らかに
されました。その種類を見てみましょう。

1.逃避
不安を感じさせる場面から消極的に逃れようとします。逃避には以下の4つの形態
があります。
退避:
自己の評価の低下が予想されるとき、それを回避すること。これが習慣化す
ると、多くの現実から自分を隔離する自閉に発展することがある。
現実への逃避:適応困難な事態に直面するのを避けて、それとは直接関係の無い
別の行動に没頭することによって不安を解消しようとする。趣味や娯楽に熱中したり、
家庭の問題から逃避して仕事に夢中になったりすること。
空想への逃避:現実の困難な状況から自由な空想の世界へ逃げて、そこで現実に
満たされない自己実現を夢見ることで、代償的満足を得ること。
病気への逃避:病気を理由に困難な事態から逃れようとすること。これは仮病と違い、
無意識的に生じる。ヒステリー性の身体症状、過敏性大腸症候群など。

2.抑圧
社会的に好ましくないとされている性の願望や、攻撃的傾向を無意識に抑圧している
状態をいいます。

3.投射(投影)
自分が持っている社会的に望ましくない感情を、相手が持っていることにして責任を転嫁
する防衛のメカニズムを言います。たとえば、「私はあの人が嫌いだ」と思えば、自分に
良心の呵責を負うため、「あの人が私を嫌っている」と相手のせいにすることです。
被害妄想は投射の最も進んだ形です。

4.同一視
ある対象の考え方や感情、行動などを無意識的に取り入れ、その対象と同じような
傾向を示すようになる場合があります。これは権威のある個人や集団と自分とを
同一視して、自己の評価を高めようとする防衛のメカニズムです。たとえば、テレビ
の主人公の服装や言動を表面的に真似て偉ぶったり、出身校を自慢したりします。

5.反動形成
十分に自分の中に押さえ込めていない欲求に、ある程度自分で気づいており、それが
表面化して自己の評価が下がることを恐れ、それを避けるためにまったく正反対の態度
や行動をとる防衛のメカニズムを指します。たとえば、無関心をよそおいながら、その
背後に強い関心があったり、大げさな同情の裏にあざけりが隠されていたりします。

6.合理化(理屈づけ)
もっともらしい理屈をつけて、自己を正当化しようとする防衛規制を言います。
たとえばイソップの「すっぱいブドウ」に見られるような、努力しても入手できない
目標の価値を低めることによって、緊張の解消する自己弁護などがあります。

7.補償
ある分野での劣等感による緊張を解消するために、他の分野で優越感を求める
防衛のメカニズムです。たとえば、学業面での劣等感をスポーツ面や所持品の
優秀性などで補おうとすることです。

8.昇華
抑圧された欲求や衝動が社会的、文化的に承認される価値のある好ましい活動
となって表現されることをいいます。攻撃的傾向や性的欲求による緊張が、学問
や芸術、スポーツなどで代償的に解消されている状態です。

9.置き換え
ある対象に向けられた無意識的な欲求や衝動を他の対象に向け変えることに
よって、はじめの対象からの攻撃を防いだり、不安、罪悪感、欲求不満などを
解消しようとするメカニズムです。たとえば、異性に対して恐怖感を持っている
ものが、異性の持ち物に愛着を示す(フェティシズム)ことがあります。また、
爪かみ、指しゃぶりなども、抑圧された欲求の目標が置き換えられた形の
代理行動であると言われています。

10.摂取(取り入れ)
外界の対象やその対象の持っている特徴を自分の中に取り入れるメカニズム
です。周囲からの保護を失ったり、拒否、処罰、孤立化されるのを防ぐために、
周囲の期待に沿う行動をすることで不安を解消します。

11.否認
個人が知覚しているけれど、それを自分で認めてしまうと不安になるような事柄
に対して、それを現実をして認知することを無意識のうちに拒否することです。
つまり、外界からくる感覚的な印象を遮断したり、できるかぎり注意を向けない
ようにして、この印象のもたらす苦痛を部分的に無くそうとします。


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