人のもつ欲求と欲求不満時の葛藤

うつ病やその他精神疾患には、誰でもかかってしまう可能性があります。
そのきっかけのひとつには、人間誰もが体験する、置かれた環境と欲求
との摩擦が引き起こす「葛藤(かっとう)」があります。
人は欲求を複数持っており、これらの欲求は対立したり、選べなかったりして
迷うときがあります。このように欲求不満の状態を心理学上では「葛藤」(conflict)
と呼んで、3つに分類しています。

1.接近と接近の葛藤
二つの欲求、またはそれ以上の欲求の対象が、プラスの要素を持っており、
すべて欲しいけれども、同時にそれをかなえることができない場合のことです。

例)「二つの会社に合格したけれど、どちらの会社を選ぼう」
「次の休みは、映画を観に行こうか、遊園地に行こうか迷う」

この葛藤は、前向きな良い葛藤で、比較的解決が容易です。深刻な苦悩
に陥ることは少ないとされていますが、選びとった事柄が、断念したほうよりも
満足できずに、動揺したり後悔することもあります。

2.回避と回避の葛藤
二つの欲求、またはそれ以上の欲求の対象が、マイナスの要素を持っており、
どれも避けたいのに避けられない場合のことです。

例)「勉強するのもいやだし、しないで親に叱られるのもいやだ」
「職場の人間関係もいやだけど、仕事を辞めて収入が無くなるのも困る」

この葛藤では、決断に長い時間を必要とし、苦しい状態に陥りがちです。
これにより神経症的な症状が現れやすいとされています。

3.接近と回避の葛藤
欲求の対象が同時にプラスとマイナスの要素を有している場合のことです。
こわいもの見たさがこれにあたります。またマイナスの領域を経なければ、
プラスの領域に達しない場合もこれにあたります。

例)「フグは食いたし命は惜しい」
「この大学に入りたいけれど、入試の偏差値も倍率も高くて不安だ」

この葛藤では、目標に近づくにつれて感じるプラスとマイナスの要素が
ともに強く増大します。また、出発点では目標へのプラス要素が強いので
接近しようとしますが、目標に近づくにつれてマイナスの要素が急激に増大
します。ですから、接近しようとする前向きな気持ちと回避しようとする後ろ
向きな気持ちとのバランスのとれた位置で立ち往生してしまう場合があります。
「前にも進めず、後ろにも退けず」という状態になったとき、情緒的に不安定に
なったり、ひどいときには適応障害に陥るときがあります。

比較的わかりやすい意識できるレベルの「葛藤」を上記で挙げましたが、
葛藤のなかには、意識されないで、そこから生じる不安のみを自覚する
無意識的なレベルのものもあります。無意識の葛藤からは、神経症の症状
や行動の混乱、性格障害などの形で現れることが多いとされています。

葛藤の解決方法は決して簡単ではありません。欲求の強さが均衡している
場合には、どちらを取るべきかおおいに迷うものです。一般には、その目標に
近づいたり、遠ざかったりする過程のなかで決心がつくことが多いです。

人間には長期展望ができるという特性があります。たとえば、将来の大きな
買い物や仕事のために、現在を位置づけてその困難に耐えて努力すると
いったことです。これを「快楽の延期」といいます。社会生活では、将来の
価値のために欲求の満足を自ら延期する努力をするか、欲求のままに
手近な満足を求めるかで、評価がわかれることがあります。幼い子どもや
非行少年のパーソナリティの一面には、この長期展望の不足と欲求の
直接的満足の傾向が強いことが示されています。


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